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真夜中最深部

寒い夜。 冷たいあなた。



『 真夜中最深部 』




寒い、寒い、夜だった。
満月の明るい月が、冬の澄んだ空気に綺麗だった。
明日からは二学期の期末テストが始まる。
僕は机に向かって居た。
眠気に幾度となく襲われながらも、何とか目を開けて居た。




こんなんじゃちっとも頭に入らないな。
そう思って、シャツの上に少し厚手のパーカーを羽織り部屋を出た。
裏起毛の紺のパーカーだった。
玄関を通る時、風呂場の方から声がした。
風呂から上がった母親の声だった。
小さくて聞き取れ無かったから、僕は其の儘、家の外に出た。


暖房の効いた室内から、十二月の夜の屋外に出るのは痛かった。
寒さが鼻から気管、肺に流れ込む。
肺の奥がズーンと、痛かった。
吐く息が白くなって空に還っていく。

冷たくなる鼻を押さえて、僕はマフラーを持って出なかった事を後悔した。


眠気は一気に覚めた。
冷たい空気に触れ、眼球まで冷たくなっていく氣がした。
真っ暗なアスファルトを見つめて、宛ても無く歩いて居た。
この儘、夜の闇に溶けて行けそうな氣になった。

ふと顔を上げると、遥か上空、目線の先には月が浮かんで居た。
室内から見ていた月よりも、いっそう綺麗な色だった。
僕はその月に吸い寄せられる様に、月に向かって歩き続けた。
冷たい指先を気にしながらも、唯、真っ直ぐに歩き続けた。


もうどれ程歩き続けただろう。
閑静な住宅街を抜け、人気の無い真っ暗な公園を抜け、歩いてきた。
もう此處が何處なのかさえ、僕には解らなかった。


その時だった。
後ろからパトカーが凄いスピードで走って来た。
乗車していた刑事はスピーカーで叫んだ。

止まれ! 止まるんだ!

呼び止められた様に、僕は足を止め振り返った。
邊りには僕しか居ない。
何故警察に呼び止められたんだろうか。
自分が呼び止められて居る実感さえ
無かった僕は、頭に疑問符を並べる事しか出来無かった。

パトカーから二人の刑事が降りてきた。
僕の目の前で立ち止まると警察手帳を掲げ、
胸のポケットから取り出した紙で何かを確認している。
そして、もう一人の刑事と目を合わせたかと思うと僕にこう言った。



殺人罪で逮捕する。



僕は何が何だか解らなかった。
人など、殺した覚えは無い。

反論も抵抗もする間等なく、僕の手にはアッサリ手錠が掛けられた。

パトカーに乗ると、刑事が話だした。


君は―――だな?

はい。

何でこんな処に居るんだ?
君の住む街からはかなり離れて居るだろ?

わかりません。

わかりませんじゃないだろ、
お前は昨晩自宅を出て―――さんを殺害、逃亡したじゃないか。
目撃者が居るんだぞ!

―――さん…?



その名前を聞いた時、
僕の頭の中では何かが関を切った様に溢れだした。



あの夜の満月。

冷たい夜道。

街灯。

街灯。

街灯。

住宅街。

真っ暗な公園。

道路の脇から此方を見て居た猫。

街灯。

街灯。




――そして、 夜道に飛び出して来た女の子。


ぶつかった。

散乱した鞄の中身。

女の子を捕まえる。

ポケットからナイフを取り出す、僕。

凌辱の痕。

首。

胸。

腹。

背中。

無数の傷跡。

澤山の血。


重ねても冷たい唇。


学生手帳。

携帯電話。

財布。

荷物を集めた。

それから

彼女の傍らに置いた。



街の灯りに照らされて、車内は少し明るかった。
僕はふと、自分自身を見た。



両手は真っ赤な血にまみれて居る。

どうりでさっきから鉄の臭いがすると思ったんだ。




君はキレイだね。




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  1. 1988/01/18(月) 10:05:20|
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