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白昼夢シンドローム

きっと其処は至上の楽園。



『 白昼夢シンドローム 』



ねぇ、この世の果てには、地圖にない國があるんだって。
あ、それ、聞いた事有る、あの、なんだっけー・・・
樂園って言う処じゃない?。
そうそう! 樂園。
どんな処なんだろうね。
ね。樂園って、一体どんななんだろう。




西暦3059年、地球、日本。
先の世界大戦で混乱していたこの國も、落ち着きかけていた。
機械の発達で、便利にはなったものの、環境の悪化は一目瞭然。
もう、都市には緑が残っては居ないし、空は灰色に淀んで居た。
人々は、地球温暖化からも、あの大国が開発した、
地球を薄い一枚の膜で覆ってしまうという画期的な方法で守られていた。

人間の形は、西暦2000年代とは、少し変化している。
頭には四つのプラグ穴と、首筋にはバーコード。
いつかのSF映画のようだが、この時代、人間は、
頭のプラグ穴から必要な養分を吸収し、首筋のバーコードで管理されていた。
養分吸収については、地球が汚染されすぎた為に、
ヴァーチャルではないリアルな食材を体内に取り込む事が有害だったのだ。
だから、人工的に作り出した栄養素を、プラグから入れている。
バーコードは2000年代で言う、指紋や印鑑、保険証やカードの役目をする。
ようするにID提示の手段である。身分照明すらも、簡単になったものだ。



樂園のこと! わかったよ!!
何なに? 教えて!
えっとね、えっとね、あのね、日本から、海と山を越えたところにあるんだって!
そうなんだ!うっわー行ってみたいなぁ。
今度さぁ、みんなで行ってみようか。
そうしようか! もうすぐお休みだしさ、此処、抜け出しちゃおうよ!


彼女たちは、戦争孤児。
先の大戦で、親も、家も、何もかも無くした子供たちだ。
あんな戦争など無ければ、きっと今頃お洒落をして街にたむろしている年代。
10代後半の、女の子たちだ。
皆、親も家も無いので、孤児院で暮らしている。
孤児院は全国いたる処にあり、大勢の戦争孤児が暮らしている。
彼女達が暮らしている孤児院では、上下に白い服を着る事を定められていた。
もちろん彼女達も、上下白い服を着ている。
上は、少し細身のカッターシャツに、
下は正方形の布に穴を開けただけのようなアシンメトリースカート。



あれから三日。待ちに待った週末がやってきた。
太陽が、ちょうど、てっぺんに昇る頃、
彼女達は白い大きな鞄にありったけの食料と着替えを詰めて、孤児院の門を飛び出した。
綺麗に舗装され直した、白い道路を走った。走った。走った。
息が切れて、フラフラに成りながらも、後にした孤児院が見えなくなるまで、走った。



樂園は、此処から、海と山を越えた処。



彼女達の孤児院は海に比較的近い場所に建っていた。
いつも、彼女達は部屋に居ても、開けた窓から潮の馨りを感じていた。
話によると、樂園に行くには、先ず、海を越えなくちゃいけない。
彼女達は海を目指した。


一時間程歩いただろうか、やっと彼女達は海に着いた。
本来砂浜があるべき場所はコンクリートで舗装され、海は淀んでいた。


ねえ、どうやってこの海を越えればいいのかなぁ?
そうだよね、どうやって、越えるんだろう。
向こう岸見えないしねぇ。
汚いし、泳いでは行けないよね・・・。
うーん・・・あっボートあった!

彼女達から5メートル程離れた岩陰にボートがあった。
電動の小型ボートで、其処に放置されていた。

これ、使っていいかな・・・?
いいんじゃない? 置きっ放しになってたみたいだし。


彼女達はボートを引きずり、海に進めた。
全員が乗り込むと、彼女達のうち獨りがエンジンをかけた。
操縦の仕方なんてわからなかったから、兎に角、前へ、前へと進む。
ボートは物凄い速さで、波を切って進んだ。白い飛沫を上げて進んだ。
20分くらい進んだとき、彼女達の前方に大きな島が見えてきた。
白いモヤが掛かっていて、全体は見えなかった。
近づいてきた処で、ボートのエンジンを止めた。
砂浜までは少しあったので、彼女達はボートを降りた。


この辺り、海の色違うくない?
本当だー。なんか青いねぇ。底が見えるよー。
あのドロドロした気持ち悪いのも浮かんでないね。


彼女達は島を目指して、水の中をザバザバと進んだ。
最初膝の辺りまであった水面も、島に近づくにつれて浅くなっていった。


わー何これ、砂?
本当だ、歩きにくいね。
しかも、海、動いてるよ!
本当! 海が動くと、足が沈んでいくね。
気持ちいいねー。
気持ち悪いよー。
何だそれ。 ははは
あははは


彼女達は砂浜を知らない。
日本は、渾ての海岸が舗装され、コンクリートになっていた。
海で遊ぶこともなかったから、海が波打っているのを体感することもなかった。

島に着いて、見上げてみると、島は木で覆われていた。
日本に居ては、めったに見る事がない「自然」だった。


ねえねえ木だよ、木! 私初めて見た!
私も初めて見た! 図鑑でしか見たこと無かったよ。
すごいね、綺麗な緑色だね。
おっきいねぇ。こんなに大きいと想ってなかった。
あのさ、海の次は何を越えるんだっけ?
山だよ、山!
山ってあれのことだよね?
そうだよね、きっとあれだよね。
行こっか


彼女達は前方に見える小高い山に向かって歩いた。
そんなに離れては居ないようで、少し歩くとすぐふもとに着いた。
少女達は楽しいお喋りをしながら、山を登っていく。
小山だから、そんなに険しい道でもないようだ。
まっすぐ上ると頂上に着いた。
そして、そのまま、まっすぐ下る。
なだらかな下りがずっと続いていた。
小山には、木が茂っていたが、歩きづらい程ではなかった。
鳥の鳴き声が聞こえた。そよ風が髪を揺らした。
彼女達に、新しい発見が、たくさん降り注いだ。
「自然」が残っている事すら、驚きだった。
きっとこの島は、本土から離れている為に、開発から取り残されたのだろう。
どうやら、この島は無人島のようだった。


一時間程歩いた頃、急に少女達の視界が開けた。
眼の前には、一面、水面がキラキラした青い湖が広がっていた。




とたん、少女達の視界がブレた。


ザザザ、ザザザ、ザーーーーーーーーー


視界が渾て、テレビの砂嵐のようになる。
さっきまで聞こえていた鳥のさえずりも、風の音も何も聞こえない。
物凄い頭痛に襲われる。痛い、痛い、頭が割れそうだ。



フッと明るくなったかと想うと、其処はいつもの病室だった。


なんだ、またバグか。


頭と体から何本ものプラグを生やした少女は、また、静かに瞳を閉じた。
そうして少女は、いつものように、仮想現実へと落ちていった。
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  1. 1988/01/13(水) 09:58:46|
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