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夢屋

赤いファッションビルの前で、午前六時に。
料金は後払いです。



『 夢屋 』



ある日突然、ソレは私の元へ舞い込んできた。
黒い封筒、差出人は(有)ドリームメーカー。住所は書かれていない。
封を開けると上等な白い紙に黒文字で時間と場所が書かれていた。
後払いの料金は、時価、と書かれている。



おもいっきり、清々しいほどに、怪しかった。


しかし、毎日が延々繰り返しの日々にも
いい加減飽き飽きしていたので、私はその手紙に従ってみることにした。


赤いファッションビルとはこの近郊一番の繁華街にある
ギラついた若者で常に溢れかえっているビルである。
屋上に赤い観覧車が在ることが有名で、ビル全体も真っ赤だ。

そこに平日の午前六時に来いなんて、嫌がらせにも程がある。
そんな早朝、未だ通勤ラッシュも始まってはいないではないか。
私を呼び出した相手は余程の変人だろうな。
まあ、それに従う私も十分変人だろう。
そんなことを思いながら私は五時半発の電車に乗った。



赤いビルの前についたのが、ちょうど六時十分前。
まだ人気のない繁華街は、白いモヤがかかって
色とりどりのビルや看板がモヤに薄れておとぎの国の様だった。


まだ指定の時刻までは少しだけ時間があったが
私はそこのベンチに座り私を呼び出した相手を待った。



早朝だからか、何故か私は眠気に襲われ、
足元のアスファルトと自分の靴と、靴が作り出す影をぼんやりと見つめた。

目を離してまた顔を上げると
さっき居なかったはずの男がそこに立っていた。
黒いスーツに身を包んだ茶髪の男。一目でホストだろうと思った。
しかし私は、ただ一つ大きな違和感を感じた。
その男は片手に色とりどりの風船を持っているのだ。
男の手に握られた風船は、そこだけフィルターから抜け落ちたように色彩を放っていた。




男は左腕の腕時計で、六時になった事を確認すると、私のほうへ歩いてきた。
そして、ベンチに座った私の目前で、朝のあの冷たい空気をはさんで立ち止まり
行き成り口を開いた。
「初めての方ですよね?」
「はい・・・」
「ドリームメーカーの者です、この度はどうも早朝からすいません」
「いえ、全然、大丈夫です」
「早速ですが、説明に入らせていただきますね」

男は綺麗な顔立ちで、綺麗なスタイルで、綺麗な声で事務的に説明を始めた。


「我が社は、主に、お客様に夢を提供するという仕事を扱っております。
 夢、とは、お客様に、お客様自身が望んだ仮想現実をお見せすることです。
 料金は後払いで、時価です。低ければ100円やその程度から、高ければ何千万まで。
 渾て担当者の一存で決まります。」


呆れて話を聞いているうちに、男は一気に説明を終えていた。
そして脇に抱えた鞄をごそごそと探り出したかと思うと
白い紙とペンを取り出して
「こちらにご住所とお名前、サインをお願いします」
そう言ってそれらを私のほうに差し出した。
白い紙には、天国を思わせるような、雲と天使の図柄の中に
住所、氏名等、個人情報を記入する欄が並んでいた。
怪しくないだろうか?悪用されたりしないだろうか?
そんな事を脳味噌が考え出す前に、私の右手は勝手にペンを取り、既にサインを終えていた。


男は契約書を軽く目で確認し、
「契約成立ですね」
と言い残して、パチンと指を鳴らしたかと思うと、もうその場から消えていた。




私の「夢」は、もう始まっているのだろうか。
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  1. 1988/01/11(月) 09:52:51|
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