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星の玉子

それはある冷えた三月の終わり。


『 星の玉子 』



私はベランダに立ち空を眺めて居た。
今日も何も変わらない真っ暗な空が広がってるなぁ
そんなことを思いながら。


私はある異変に気づいた。





月のちょうど真下、雲が途切れたその隙間に
銀色の点が浮かんでいた。
人差し指と親指で輪を作りその点を輪の中に入れる。
あれ、何の星だろう。
そうして少しの間、その点を眺めていた。
すると、その点はどんどん大きくなっているではないか。
私はその点から目が離せなくなり
輪の中に捕まえた、そのどんどん大きくなっている点をただただ見つめていた。

何分経っただろう。
はじめ星に見えていた点はどんどん大きさを増し
次第に輪郭を表し始めた。


人だ!

人が空から降ってきてる!


よく視ると、それは、銀色の光を、全身に纏った男の子だった。
髪は少し長めで、金髪だった。肌は白く透き通っていた。
顔も綺麗な作りをしていた。大きな瞳は真っ赤だった。

その男の子は私の目前で止まり、空に浮いたまま此方に手を差し伸べた。
私はその手をとろうと、手を差し出した。




ピピピピ ピピピピ ピピピピ ピピピピ
細く開いた瞼の隙間から、朝の、キラキラした太陽が流れ込んできた。
なんだ、夢だったのか。綺麗な人だったな。
目が覚めるとなんだか切なかった。

私は、目が覚めると、大抵すぐに夢を忘れてしまう。
でもこの夢だけは特別だった。忘れようとしても忘れられなかった。
その日から、その夢はずっと続いたからだ。


次の夜、私はいつもどおりに眠りに落ちた。

昨日見た夢の、終わり、男の子が此方に手を差し出すシーンから
その夜の夢は始まった。

差し出された手に、私は、24時間越しに、やっと触れることが出来た。
暖かくて優しい手だった。
私は男の子と手を繋いだまま、浮いた。空に、浮いた。
不思議と恐怖は感じなかった。夢だからだろうか。
ただ見詰め合って、冬の夜の冷たい風に吹かれていた。

そのとき、男の子が何か謂おうと口を開いた。
男の子の口が何か言葉を発している。


私の耳には聞こえなかった。



今度はそこで目が覚めた。その日はちょうど雨だった。
ちょっと憂鬱な気分になりながら学校に向かった。
毎朝、電車は満員ラッシュで、晴れでも少し憂鬱だというのに
雨の日なんて傘を持っているだけで、私は3割増しで憂鬱だ。


その日の夜は、昨日男の子が言いかけていた何かを気にしながら
早々に眠りに付いた。


夢はまた前日の続きから始まった。男の子が口を開くシーンから。
今度はちゃんと音声もついていた。

「きみはしあわせ?」

夢の中で私は何を答えるでも無く、唯、男の子を見つめていた。
男の子はまた、口を開いた。

「きみは、いま、しあわせ?」


そこで目が覚めた。時計を見ると夜中の二時を過ぎたところだった。
私、しあわせなんだろうか。その考えだけが頭を支配していた。


私は、高校生だ。
友達は、いる。何不自由なく、生きてる。

でも、何か、足りない。
自分でも何が足りないかわからない。
きっと、幸せじゃ、無い。



その夜からぱたりと、あの夢を見なくなった。



私は今、幸せなんだろうか。
その考えばかりが頭を巡る。

何か、足りない。 何が、足りない?

学校は楽しい。友達もいる。
勉強もまあまあできる。それなりに生活は充実してる。

でも何か足りない。 一体、何が、足りない?

昼も夜も、同じことを繰り返し、何度も考えた。

私に足りないものは何だ?

その言葉しか頭に浮かばなくなっていた。




一週間が過ぎた。
私は、未だあの夢の続きを見ていない。




その日は、行き成り、クラスでも仲の良い友達から手紙を貰った。
普段手紙なんて書かない子なのに、一体何なんだろう。
疑問符を並べながら、手紙を開いた。

白い便箋に書かれた稚拙な文字が 胸の何處か、柔らかな場所に、刺さった。


私、もう、疲れた。
これ以上、一緒にはいられないよ。


私が一体何をしたの?
朝は一緒に登校していたし、お昼ご飯も一緒に食べた。

私が一体何をした?
何気ない話も澤山したし、たくさん一緒に笑った。



――――笑った? 私、笑ってたっけ?


あの子と居るとき、本当に楽しかった?
みんなと居るとき、本当に笑ってた?
唯、話をあわせてただけじゃなかった?
あれは作り笑顔じゃなかった・・・?


――――あの子は、本当に、友達だった?


私、本当はちっとも幸せじゃなかった。
友達なんて所詮形だけ、そう思って誰も信じてなかった。
誰も信じようとしなかった・・・。


なんだ、私、幸せじゃないじゃん。


何日も考えてた答えが、こんな形で出るとは思わなかった。


あの夢が私に教えてくれた真実は 何だかちょっと重かった。


その夜、絶望に暮れながら、泣きはらした目をして
私は早々眠りについた。
明日学校行きたくないな。そう思いながら。


最後にあの夢を見た日から12日、私はあの夢の続きを見た。


「きみは、いま、しあわせ?」

幸せじゃ、ない。

夢の中の私も、そう答えていた。

「しあわせじゃ、ないの?」

うん。淋しいよ。 幸せなんかじゃ、ないよ。

「そっか。残念だね。」

男の子は何故だかポロリと、真っ赤な目から涙を落とした。
その涙は男の子の真っ白な肌を伝わり、何處かへ消えていった。

なんで君が、泣くの?

「君が泣かないからさ」

私が、泣かないから?

「そう。君は、今、きっと、泣きたくて仕方無い。」

泣きたくなんて、ないよ

「嘘は吐かなくていいよ、僕には、わかる」

泣きたく、なんて、ない、よ

いつの間にか私も涙を流していた。

「ほら、泣きたいんじゃないか」

私は嗚咽を上げて泣きじゃくってしまった。

男の子は、そんな私を呆れ顔ひとつせずに
ただ微笑みながら見守っていた。


「ねえ、きっと、もうすぐ元気になれるよ」

なんでそんな事わかるの?

「今いっぱい泣いたから」

そうだね、いっぱい泣いたものね。

「君にはやっぱり、笑顔が似合うよ」

なんで?なんでそんな事謂ってくれるの?



「いつも君を見てたから」

見てた・・・?

「いつも見てた。君がいつもベランダに立って空を見上げてるの」

見られてたんだ・・・。毎晩ベランダにいるの・・・。

でも・・・、何處から?
近くに人影があれば、気付くじゃない。

「これからもずっと見てる。君の笑顔も泣き顔も、全部、全部。」

男の子はそう謂って微笑んだかと思うと
銀色の霧に成って、空に溶け、消えてしまった。






私はここで目を覚ました。 すがすがしい朝だった。
いつかと同じキラキラした太陽が窓から差し込んでいた。

起き上がろうとしたとき、右手の中に異物感を感じた。

不思議に思って開いてみると

そこには白い半透明な、兎の硝子細工が握られていた。
やっぱり目は真っ赤だった。

なんだ、そうだったのか。
ちょっと可笑しくなって笑った。

笑顔が似合うと謂ってくれたあの男の子を思い出しながら。

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  1. 1988/01/08(金) 09:37:48|
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