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三年五組の窓際、最後列

窓ガラス越しの秋の日差し。
昼下がりの午後は眠気がすごい。


 『 三年五組の窓際、最後列 』


「However、しかしながら」
今日も英語の教師が教卓で自己満足を繰り広げている。顔はカエルにそっくり。

机に突っ伏して、片耳をイヤホンで現世から断絶。
誰も入り込めない自分の世界にどっぷりとはまってる。
五分の二。

隣の席のヤツと小声で小話に花を咲かせてる。
たまに盛り上がってトーンが上がると、教師に厳しく注意される。
それを軽く受け流してまた小話再開。
五分の二。

クラスの雑音を頭から切り離しながら、必死にノートを取ってる。
教師の一言一句を聞き逃さないよう常にアンテナは三本。
目とペンと左右に走らせながら、授業を受けてるヤツ。
五分の一。

俺は窓際の最後列から、この馬鹿げたクラスを眺めていた。
五分の一と同じように、片耳を現世から断絶して。
ぼんやりと眺める教卓には自己満足に焦る英語教師の顔が見えた。
誰も指名されることのない教室にはドロドロした粘性のある液体が充満している。








この席からはグラウンドの左端と、裏門と体育館が見える。
グラウンドからはトラックを走らされる生徒の嫌そうな掛け声が聞こえる。
体育館からは球技に興じる楽しそうな笑い声と、滑り止めが床を蹴る独特の音。
体育教師が笛を吹き、球技を一旦停止した。
トラックを走らされていた一群もいつの間にかノルマをこなしていたようだ。

俺は興味の対象を全て奪われ、ふと裏門に目をやった。
両端を並木に挟まれ光源を奪われ影になった裏門。
大きく開くと車一台は出入りできそうなスペースになる。
普段は守衛の立った正門を利用するため、この裏門は硬く閉ざされている。
裏門の外を何人かの主婦が連れたって自転車に乗り通り過ぎていった。
今にも愚痴をこぼす話し声が聞こえてきそうな快活で気だるい表情。





机の端においていたパックジュースを一口飲むと教師と目が合った。
面倒なことにはしたくないからサッとパックを鞄にしまう。
教師は満足したのか、自己満足を再開。
「take care of、面倒を見る」





俺はまた裏門に目を遣った。半分が終わった授業の残り時間は二十五分。
教師がページをめくるように告げ、一斉にページをめくる音が聞こえる。
つられて俺もページをめくった。

また裏門に目を戻すと、裏門のすぐそばに一人の男が立っていた。
豹が跳ぶマークの、スポーツメーカーの黒いジャージに水色のティーシャツ。
黒いパンツをはいているようだ。髪の毛は逆立った金色。
ハードワックスとスプレーでしっかりとホールドされた髪は
風なんかじゃ、なびかなかった。

男はジャージのポケットの両手を突っ込み、ゆっくりとこっちに歩いてくる。
グラウンドの嬌声の中にも、体育館の足音の中にも、男に気付いているやつは居ない。
誰にも見付からない男はゆっくり、ゆっくりとこの教室がある棟へと近づいてくる。
そして俺の視界からは消えた。哀しき二階の窓際。
あの男は一体なんだったのか。

「not only A , but also B 、AだけでなくBもまた」





あれから十分くらいが経過しただろうか。
教室はまだドロドロに満たされたままで、ワンマンショーは続いている。
気だるい授業がこのまま延々と続くかと思われたその時、
大きな音を立てて教室後方の扉が何ものかによって開かれた。
生徒が一斉に振り返るのと同時に、俺も自分とは反対側のドアを振り返る。
そこに立っていたのはあの黒いジャージの男だった。
頭には、すっぽりと黒いジャージのフードを被っていた。

男はゆっくりとポケットから手を出す。
ドアから一番近い席に座っていた女の子が顔を下ろすと同時に
声にならないような短い悲鳴を漏らした。
そして男は一瞬あげた腕を、その女に向かって振り下ろした。
男の頭上で何かがキラリと光ってドッというぶつかる音がした。
女の首の付け根には男の腕があった。
教室はいきなり冷えた水を注ぎ込まれたみたいに静まり返っていた。

そして男が、腕をゆっくりと動かした。
右手に握られていたのは黒いコンバットナイフ。
真っ赤に染まっている尖った刃先が鮫の横顔に似ていた。
刺されたクラスメイトは必死に自分の首を押さえ、アー、アーと叫んでいた。
首から血を噴出す女を中心に、次第に波紋は広がっていく。
一時停止を解除されたクラスメイトたちは口々に悲鳴をあげながら
机を倒して座っていた椅子を立ち上がり、男から後ずさった。
椅子が倒れる音と悲鳴が教室内に響く。
カエルは教卓から後席を振り返り唖然としていた。





次に、逃げ遅れた男子生徒が男に捕まり、よく切れるナイフは男子生徒の腹を横切った。
男子生徒の体は腹を押さえた形で折れ曲がったから後ろから見ていても分かった。
男子生徒は何が起こったのかもわからないうちに両手を血に染め、その場に膝から崩れた。

次は太もも、次は背中、次は腰、次は肩、男は次々と生徒を刺していく。
俺は椅子から立ち上がれもせずに呆然とその光景を見ていた。
男が俺の視線の上に立ったとき、ふと目が合った。
男の動きが止まる。黒いジャージには点々と光るように血しぶきが飛んでいた。
あれだけの人間を刺したんだ、返り血くらい浴びて当然だろう。
一瞬見えた男の口元はニヤリと笑っていた。
フードで口元しか見えなかったが顎のラインからして端整な顔立ちをしているようだった。

胸、腰、首、腕、手のひら、肩、わき腹。
男は俺と自分との間に立つ生徒を次々と刺しながらこっちに近づいてきた。
教室の中には血の臭いが充満し、床には何人もの人間が転がっていた。
きれいな木目張りだった床は今では真っ赤に染まり、木目すら見えない。
真っ白だった壁には所々、血しぶきが咲いていた。





ふと目を戻すと男は俺の目の前に立ち、笑いながらこっちを見ていた。
俺が椅子から立ち上がると、フンと鼻で笑って俺に手を差し出した。
自分が刺される危険も考えたが不思議と恐怖は沸かなかった。

差し出された右手は真っ赤に染まっていた。
なぜか俺もつられて右手を差し出した。握手するみたいに手をとられた。
その瞬間俺の視線はぐるりと反転し、入り口が見えていた視界には
なぜか背中の後ろにあったはずの壁が見えていた。黒いジャージの男は消えていた。
振り返ると、後ろにはなぜか怯えた目でこっちを見ているクラスメイトたちと教師。

ゆっくりと視線を下ろす。左手には鮫の横顔みたいなコンバットナイフ。
着慣れたブレザーのカッターシャツには大量の血液が飛んでいる。
しばらくしてドアから雪崩れ込んできた体育教師たちに取り押さえられた。





「外部からの進入はなかったと見られ、その場に居合わせた生徒たちは
 犯人の少年が突然立ち上がり次々とクラスメイトを刺していった、と話しているそうです。
 警察は覚せい剤の所持も視野に入れ、この少年を取り調べています。」
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  1. 2005/11/27(日) 21:24:39|
  2. Novel|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:2

コメント

夜中にびっくりしたよ
怖いよ(笑)
丑三つ時に読んじゃった(笑)

ま、さっきまで2のオカ板見てたけどw
※オカ板見すぎたら、原因不明の頭痛とか来ますんで程々にw
  1. 2005/11/28(月) 02:05:10 |
  2. URL |
  3. しゅき #-
  4. [ 編集]

>>朱貴もそ
こんばんわ(^ω^)コメントありがとよ
丑三つ時に読むよな話じゃありませんよw
ポカポカ陽気の午後に読んでくださいww(^ω^)ww

オカ板怖くて見たことないんですwなんてったってビビり('A`)
  1. 2005/12/03(土) 20:26:03 |
  2. URL |
  3. いちご@MASTER #Lk84Cx12
  4. [ 編集]

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